AIが害獣の巣窟を炙り出す!ChatGPT×GISで農場を守る熱量マップ自動生成

はじめに

農業DX担当者の皆様、広範囲にわたる害獣被害の現状把握と対策立案に苦慮していませんか?本記事では、OpenAIのChatGPTと地理情報システム(GIS)を連携させ、害獣被害の度合いを可視化する熱量マップを自動生成する画期的なPoC(概念実証)をご紹介します。AIと地理空間情報を組み合わせることで、より迅速かつ精密な被害状況の把握と対策が可能になる、農業DXの新たな可能性を探ります。

ChatGPT×GISで害獣被害「見える化」PoCとは?

このPoCは、農家や自治体などが蓄積する害獣被害に関するテキストデータ(被害報告、目撃情報など)をChatGPTが自然言語処理によって解析し、被害の発生場所、種類、頻度などの情報を抽出します。抽出された情報はGISと連携され、地図上に被害の大きさを色分けで示す熱量マップとして自動的に生成されます。これまで、これらの情報を手作業で集計し、地図化するには多大な時間と労力を要しましたが、ChatGPTとGISの連携により、リアルタイムに近い形で被害状況を可視化することが可能になります。これにより、被害の大きい地域や特定の害獣の発生傾向などを一目で把握でき、より効果的な対策を迅速に講じることが期待されます。

なぜ害獣被害マップ自動生成にChatGPTとGISが有効か

害獣被害に関する情報は、報告書や日誌などのテキスト形式で記録されることが多く、その全体像を把握するには専門家による分析が必要でした。ChatGPTの高度な自然言語処理能力は、これらの非構造化データから重要な情報を効率的に抽出することを可能にします。一方、GISは、地理空間情報を視覚的に表現し、分析するための強力なツールです。ChatGPTが抽出した被害情報をGISと連携させることで、被害の空間分布や集中度を直感的に理解できる熱量マップとして表示できます。これにより、被害が深刻な地域を特定し、重点的な対策を講じることが可能になります。また、過去のデータと比較することで、被害の経年変化や拡大傾向を把握し、より予測的な対策を立てることも期待されます。

PoCの仕組み:データ収集から熱量マップ生成まで

以下の手順の実装になります。

  1. 収集 → 多様なソースを定義し自動取り込み
  2. 解析 → ChatGPT API+ジオコーディングで構造化
  3. マッピング → PostGIS/QGIS or Python でグリッド熱量マップ生成
  4. 可視化・レポート → Web UI/BI ツール連携+Python レポート自動作成

これらをワークフロー化することで、害獣被害の「見える化」から「報告書作成」までを自動化できます。

①データパイプライン:生データの収集と保管

データソース設計

  • 農家からの報告書(PDF/Word/画像→OCR)、自治体アンケート(Google フォーム)、猟友会のログ(CSV)、SNS(Twitter API、LINE公式アカウントの投稿ログ)などを列挙。
  • 各ソースごとに「日時/本文/投稿者ID」などのメタ情報を付与する。

自動取得スクリプト

  • Google フォーム → Google Sheets に集約し、Apps Script で定期エクスポート。
  • メール添付 → Gmail API + Cloud Functions で添付を Cloud Storage に保存。
  • SNS → Python+Tweepy/LINE Messaging API で定期取得し、raw テーブルに INSERT。

Raw データ格納

  • PostgreSQL + PostGIS を推奨。
  • テーブル例:
CREATE TABLE raw_reports (
  id SERIAL PRIMARY KEY,
  source TEXT,
  reported_at TIMESTAMP,
  raw_text TEXT,
  metadata JSONB
);
  • バッチ処理(Airflow/Cloud Composer)で1日1回 or リアルタイムに取り込む。

②解析エンジン:ChatGPT+NLP による構造化

プロンプト設計

  • 入力:raw_text
  • 出力 JSON フォーマット例:
{
  "species": "イノシシ",
  "crop": "水稲",
  "severity": "中程度",
  "location": "栃木県那須町",
  "date": "2025-05-05"
}
  • プロンプト例(system+user):

“あなたは農業害獣レポート解析 AI です。以下の報告文から、害獣の種類、被害作物、被害度合い、発生場所、発生日時を JSON で抽出してください。”

OpenAI API 呼び出し

  • Python 例(疑似コード):
import openai
def parse_report(text):
    resp = openai.ChatCompletion.create(
        model="gpt-4o-mini",
        messages=[{"role":"system","content":SYSTEM_PROMPT},
                  {"role":"user","content": text}],
        temperature=0
    )
    return json.loads(resp.choices[0].message.content)
  • 並列化/リトライ を組み込み、失敗レコードは監視テーブルへ落とす。

正規化・ジオコーディング

  • 抽出した locationGeopy(Nominatim)Google Geocーディング API で緯度経度に変換。
  • 異表記(「那須町」「那須まち」等)は lookup テーブルで統一。

構造化データ格納

  • PostGIS テーブル例:
CREATE TABLE incidents (
  id SERIAL PRIMARY KEY,
  species TEXT,
  crop TEXT,
  severity TEXT,
  occurred_at DATE,
  geom GEOMETRY(Point, 4326)
);

③マッピング:熱量マップ生成

頻度・重み付けの集計

  • SQL で一定期間・地域ごとに件数や重みスコアを算出:
SELECT
  ST_SnapToGrid(geom, 0.01) AS cell,  -- グリッド単位
  COUNT(*) AS count,
  AVG(CASE severity WHEN '大' THEN 3 WHEN '中' THEN 2 ELSE 1 END) AS avg_sev
FROM incidents
WHERE occurred_at BETWEEN '2025-05-01' AND '2025-05-06'
GROUP BY cell;

Heatmap タイル生成

  • QGIS の「Raster > Heatmap」機能で一括生成。
  • Python(Folium + plugins.HeatMap) でも可:
import folium
from folium.plugins import HeatMap
m = folium.Map(location=[36.5, 138.5], zoom_start=6)
data = [(row.lat, row.lon, row.count) for row in grid_rows]
HeatMap(data, radius=25).add_to(m)
m.save('heatmap.html')

可視化/分析 & レポート

Web アプリ化

  • Stack:React + Mapbox GL JS または Streamlit
  • 機能
    • 時系列スライダー/ドロップダウンで種別・作物フィルタ
    • ポップアップで詳細データ表示
  • デプロイ:Vercel(静的サイト)+Supabase(API/認証)

ダッシュボード連携

  • TableauLooker Studio に PostGIS → BigQuery(または Supabase)経由で接続し、定点分析ビューを構築。

自動レポート生成

Python+python-pptx でスライド作成:

  • ① 全体被害グラフ(棒・円)
  • ② 地図スナップショット埋め込み
  • ③ ChatGPT に要約プロンプトを投げて文章生成

または ReportLab で PDF 生成。

運用フロー

  • 毎日/毎週定時バッチで ETL → Heatmap 更新 → Web 公開 → レポート配信(メール or LINE)。
  • エラー検知とアラート:CloudWatch/Cloud Monitoring で API 弱封や geocoding エラーを Slack 通知。

期待される効果:迅速な対策と効率的な資源配分

ChatGPTとGISを活用した害獣被害熱量マップの自動生成PoCは、以下の効果をもたらすことが期待されます。

  • 迅速な被害状況の把握: 手作業による集計・分析と比較して、リアルタイムに近い形で広範囲の被害状況を可視化できるため、迅速な対策立案が可能になります。
  • 重点対策エリアの特定: 被害の大きい地域をヒートマップで一目で把握できるため、人的・物的資源を重点的に投入すべきエリアを効率的に特定できます。
  • データに基づいた意思決定: 客観的なデータに基づいて対策の効果測定や計画の見直しを行うことができ、より効果的な害獣対策の実施に繋がります。
  • 被害予測への応用: 過去の被害データと環境データなどを組み合わせることで、将来の被害発生リスクが高い地域を予測し、予防的な対策を講じることが期待されます。
  • 情報共有の促進: 生成された熱量マップやレポートを関係者間で共有することで、被害状況の共通認識を持ち、連携した対策を推進しやすくなります。

まとめ

ChatGPTとGISを連携させることで、害獣被害に関するテキストデータを解析し、被害状況を可視化する熱量マップを自動生成するPoCが開発されました。迅速な被害把握、重点対策エリアの特定、データに基づいた意思決定など、効率的な害獣対策への貢献が期待されます。

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