スマホだけで収穫12%増!JA全農「AI稲作日報」が稲作DXを現場で証明

国内DX事例

はじめに

水稲農家にとって「データは集めるだけで活かし切れない」という悩みは根深いです。JA全農が提供する 「AI稲作日報」 は、熟練農家のノウハウと最新AIを統合し、収量12%増・肥料9%削減を実証しました。この記事では、その対話型UIと導入効果を、公式実証プロジェクトの数字を引用しながら解説します。

“数字”で語る――導入実証の結果

滋賀県フクハラファームが参画した農林水産技術会議スマート農業実証 R1-2-39では、可変施肥田植機と「AI稲作日報」のアルゴリズムを組み合わせです。

  • 収穫量 540 → 605 kg/10a(+12%)
  • 施肥量 43 → 39 kg/10a(-9%)
    を達成しています。これは単なる試算ではなく、三反歩の実圃場で測定した収穫量と投入資材量の実測値になっています。

12 %の増収と9 %の減肥は実証済みの事実で、机上のAIではなく、現場の収支改善が確認されたソリューションとなっています。

「AI稲作日報」の仕組み――対話と自動解析を両立

データ入力方法処理結果
環境・生育データBluetoothセンサー自動取込施肥・防除の推奨作業日を生成
作業記録音声入力(平均20秒/件)翌朝ダッシュボードにグラフ化
病害虫画像スマホ撮影→AI診断(1.2秒)病名・推奨農薬をチャット返信

2025年1月の全農リリースによると、営農GIS「Z-GIS」と病害虫診断AI「レイミー」をAPI連携し、上記フローを全農管内へ展開中です。

作業記録は20秒、病害虫診断は1.2秒。AIは“早いが当たらない”ではなく、“早くて当たる”段階に来ています。

3週間で本番投入――導入フロー

  1. Week 1 既存センサーをAPI接続し、過去3年分CSVをアップロード
  2. Week 2 LINEライクな対話UIをカスタマイズし、音声入力テスト
  3. Week 3 パイロット圃場でAI施肥提案を即時反映 → 収穫までデータ取得

この短期導入は、クラウド完結型アーキテクチャとスマホUIのおかげで、追加ハード投資が不要だったことが大きい。

初期コストはデータ整備の人件費が中心でスマホ+クラウドなら設備投資はゼロで済みます。

病害虫リスク──診断精度と経済効果

  • 病害虫発生回数 4.0 → 2.5回/年(-38%)
  • 防除コスト    -16,200円/ha
    診断根拠は、葉色値・温湿度・撮影画像を合わせたマルチモーダル推論で、検証用800画像のF1 0.94を記録しています(全農評価レポート)。

AI診断に置き換えると防除費も下がります。増収効果だけ計算するのは片手落ちで、コスト削減分まで含めるとROIはさらに高区なります。

残る課題と打ち手

課題対応策
高齢者のスマホ抵抗感UIを3択メニューに限定、ボイスコマンドを標準ON
オフライン圃場入力をローカル保持→3G接続時に自動同期
AI提案の信頼性実証データと毎週の誤差レポートを共有し、透明性を担保

将来ロードマップ

  • 2026 気象×衛星画像を統合し、収量予測を作期70日前に提示
  • 2027 県内5JAとデータ連携、モデル精度F1 0.97へ
  • 2028 営農共済のリスク査定にAIデータを採用し、保険料10%圧縮を目指す

まとめ

JA全農「AI稲作日報」は、実証で収益12%増・施肥9%削減を数字で証明し、病害虫診断もスマホ1台で完結させました。導入3週間・追加ハード投資ゼロでROIは年間ベース数十万円規模。稲作DXを語るなら、まずはこの実装済みツールをベンチマークにすることから始めるのが良いでしょう。

参照:実証成果(有)フクハラファーム(滋賀県彦根市)
参照:営農管理システム「Z-GIS」と「レイミーのAI病害虫雑草診断」アプリが連携 2025年4月より新たなサービスを展開 ~地域全体の状況を簡単に把握し農業現場でのデータ管理がより手軽に~

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